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アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎(症例)

アレルギー性鼻炎

アレルギーの原因となる物質を抗原(こうげん)といい、ハウスダストやスギ花粉などがあります。吸い込んだ空気の中にある抗原が鼻の粘膜に付着し、アレルギー反応をおこします。 一方、鼻の中には、下鼻甲介(かびこうかい)とよばれる突起があり、吸い込んだ空気は、まず下鼻甲介にぶつかります。そこで、アレルギー性鼻炎では、下鼻甲介の前端で最も強くアレルギー反応がおこり、粘膜が腫れます。 したがって、アレルギー性鼻炎の診断では、この下鼻甲介の状態を観察することが重要です。

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副鼻腔炎

鼻のなかを鼻腔(びくう)といいます。一方、顔の骨のなかには、副鼻腔(ふくびくう)とよばれるいくつかの空洞があります。鼻腔におこる炎症が鼻炎(びえん)で、副鼻腔のなかにおこる炎症が副鼻腔炎(ふくびくうえん)です。(副鼻腔炎を、俗に、蓄膿症(ちくのうしょう)ともいいます)
副鼻腔は、鼻腔の中鼻道(ちゅうびどう)というところにつながっています。そこで、副鼻腔炎がおこり、副鼻腔に膿が溜まると、その膿は鼻腔の中鼻道に流れ出ます。中鼻道は、鼻の奥に向かって滑り台のように傾斜した通路のようになっています。そのため、副鼻腔からの膿は、鼻の前ではなく、後ろへ向かって流れ、ノドに落ちやすいのです。
このように、副鼻腔炎の診断では、中鼻道の状態を観察することが重要です。

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アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎

アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎の模式図を並べてみます。この図に示すように、鼻の診察をする場合には、内視鏡で鼻の中を丁寧に見ることで、アレルギー性鼻炎か副鼻腔炎かの区別が明確になります。
副鼻腔炎では、一般にレントゲン撮影が行われます。しかし、レントゲンで得られる情報はごく限られたものであり、レントゲン写真だけで副鼻腔炎の診断ができるわけではありません。副鼻腔炎の診断では、どのような症状があるかに加えて、鼻内の状態をよく観察することが重要です。
以下では、実際のアレルギー性鼻炎と副鼻腔炎の鼻内の状態を見てみましょう。

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アレルギー性鼻炎 1

a.20才女性、 b.6才女児、 c.正常例

アレルギー性鼻炎では、下鼻甲介が腫れて、鼻の奥の中鼻道などが見えなくなります。
粘膜の色は、正常に比べ白っぽくなる(b)ことが多いのですが、逆に赤みがかった色(a)になることもあります。また、下鼻甲介の表面などに透明な粘液が増えてきます。

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アレルギー性鼻炎 2

10才 女児 通年性アレルギー性鼻炎

a.処置前、b.エピネフリンによる処置後

エピネフリンという薬を粘膜に作用させると、一時的に粘膜の腫れをとることができます。このような処置を行い、下鼻甲介の粘膜の腫れを引かせた上で、下鼻甲介の奥を観察すると、副鼻腔との交通路である中鼻道などには異常がないことがわかります。すなわち、アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎との違いが、より明確になります。

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副鼻腔炎

a.4才女児 両副鼻腔炎、 b.1才男児 右副鼻腔炎、 c.正常例

a 、b 共に、下鼻甲介は、腫れていません。しかし、下鼻甲介の奥の中鼻道に膿が流れています。(aでは、両側から、bでは、主に右側の中鼻道に膿が流れています) すなわち、副鼻腔炎です。 副鼻腔は、生下時には非常に小さく、生後徐々に発育します。内視鏡を使うと、1才でも中鼻道の膿を確認することができ(b)、副鼻腔炎がおこっていることが分かります。

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アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎の合併

a.5才女児、 b.正常例

a は、5才女児の鼻内です。下鼻甲介がアレルギー性鼻炎のように腫れています。しかし、下鼻甲介に付着している粘液は、透明ではなく白く濁った色で粘り気も強い感じです。このような鼻汁は、副鼻腔炎のときにみられるものです。元々アレルギー性鼻炎があり、これに副鼻腔炎を併発するというケースは、小児でしばしばみられます。このような場合、通常のアレルギーの治療薬だけでは、よくなりません。アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎の両方に対する治療が必要です。

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