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Q&Aコーナー

16.めまい

16-1めまいの原因を教えてください。

人は、二本足で歩いたり、走ったり、ときには跳び上がって着地したりといった動きを、特に意識せずに行っています。しかし、これらの動作には、バランスをとるための非常に精緻な仕組みが必要です。この仕組みのことを前庭系といいます。両側の耳の奥の内耳というところには、半規管と前庭という器官があります。これらは、時々刻々の頭の位置や動きの状態をモニターし、その情報を脳へ送るための器官です。簡単にいうと、前庭系とは、両側の内耳からの情報、視覚からの情報、さらに全身の筋肉にかかっている重さの情報などをもとにして、全身の筋肉の緊張を微妙にコントロールすることによって、体のバランスをとる仕組みということが出来ます。この前庭系のなかの、どこかに異常が起こった場合、自覚的には、めまいという症状となります。前庭系は、全身の骨格筋の他、眼を動かす眼筋の緊張にもかかわっています。人は、自分が動きながらでも、周囲のものをぶれずに見る事ができます。これは、前庭系が、頭の動きに合わせて、眼の動きを調節しているからです。めまいが起こると、実際に、周囲の景色が回転するように見えることがありますが、このようなときに、その人の眼を見ると、痙攣したような異常な動きをしています。これを眼振といいます。

めまいは、前庭系のどこかに異常を生じた場合に起こりますが、前庭系のなかで最も重要な役割をしているところが内耳であり、また、一方で、最も脆弱なところが内耳でもあります。このため、めまい全体としては、内耳の異常が原因で起こるものが最も多いといわれています。しかし、めまいは、内耳の他にも脳幹や小脳の異常で起こる場合もあり、血圧の調節など、全身的なことが関与している場合もあります。その他、頚部の筋肉の緊張が高まりすぎた状態、いわゆる肩〜頚のコリがひどくなった状態や下肢の筋力低下が原因となることもあります。

16-2めまいの診断方法と治療方法を教えてください。

前庭系に異常がおこった場合には、前述のように、眼振という異常な眼の動きが見られます。この眼振の状態を観察することによって、前庭系のどの部分に障害が生じているかがわかる場合もあります。眼振の観察は、めまいの診断のなかで最も重要なものの一つと考えられています。また、前庭系のどこの障害かによって、自覚的なめまいの起こり方や随伴症状(めまいと一緒におこってくる、めまい以外の症状)が異なります。そこで、めまいの起こった状況や起こり方、また、その他の症状などについて、詳しくお話を聞く事が診断に役立ちます。また、内耳の障害の場合、めまいと同時に、聴力の障害を生じる事があります。聴力障害がおこっていても、軽度の場合には自覚的な難聴感がないこともありますので、めまいが起こったときには、一応、聴力検査を受けておくとよいでしょう。

治療としては、通常は、薬物療法(お薬を使った治療)が主体となります。原因によっては、お薬よりもある種の運動療法が有効である場合もあります。良性発作性頭位めまい症という病気は、めまいの原因として最も多いもののひとつといわれていますが、内耳の半規管のなかに不純物が入り込むことによって起こります。この場合には、半規管内の不純物をが外に流れ出てしまえば、めまいは治ります。そこで、この半規管内に紛れ込んだ不純物を外に流しだすための特殊な運動療法が考案されています。

16-3めまいは治療で治りますか?それとも放っておいてもいいんでしょうか?

めまいをおこす病気には、いろいろなものがありますので、一概にはいえません。自然に治ってしまい、特別な治療は必要としないものもあります。しかし、代表的な内耳の病気のひとつであるメニエール病は、めまいを繰り返しながら、徐々に聴力が下がっていくことがあります。そこで、メニエール病では、めまいを改善する治療の他に、発作予防の治療が必要であるとされています。また、聴神経腫瘍や椎骨脳底動脈循環不全症によるめまいなども、原因となる病気に対する治療が必要です。