子供さんの鼻をうまく吸う方法

鼻の吸引に伴う副損傷について

耳の痛み

イラスト:泣く

鼻を強くかんだときに、耳が痛くなるというご経験をされたことがある方も多いのではないかと思います。
器具を使って、子供さんの鼻を吸い取るときにも、同じことが起こることがあります。これは、鼻の奥と耳の中耳が、耳管という管でつながっているためです。
吸引を強い圧で、長い時間吸い続け過ぎると、このようなことが起こりやすくなります。一時的に耳が痛くなるだけでなく、中耳炎をおこす原因にもなりますので、ご注意ください。

鼻を吸うときは、あくまで弱めの圧で行い、また、あまり長く吸い続けないということが大事です。ずるずると沢山出てくるときにも、100%吸い取ってしまおうと思わず、6〜7割くらいの吸引で留めておいてください。1回で長く吸うよりも、短い時間の吸引を時間をおいて繰り返してあげてください。

頭や歯の痛み

吸引中、突然、歯が痛いといって泣き出すことがあります。また、頭が痛くなることもあります。急性副鼻腔炎を起こしているときにおこりやすいです。副鼻腔は鼻の中と小さな穴でつながっています。後鼻漏は、この穴を通じて鼻の中に出てきて、のどに流れます。そのため、後鼻漏の吸引中に、穴を通じて副鼻腔の中に陰圧がかかることがあります。通常は、副鼻腔に多少の陰圧がかかっても問題ありません。しかし、急性の副鼻腔炎では、副鼻腔内の粘膜が炎症をおこして腫れていて、この炎症をおこした粘膜に陰圧がかかると、強い痛みを生じることがあります。これが、吸引の際の頭痛や歯痛の原因です。この痛みは、とても強いものなので、一度、この痛みを経験すると、次からは、怖がって、鼻の吸引をさせてくれなくなることがあります。前述の耳の痛みと同じように、沢山吸えるからといって、強く、長く吸い過ぎないように注意してください

鼻血

鼻血は、吸引の際に、ときどきみられます。一般に、子供の場合、ほとんどの鼻血は、ある決まった場所から出ます。それは、鼻の真ん中の境の壁側(これを鼻中隔といいます)の鼻の入口に近い部分です。大体、鼻の入口から1pくらいのところです。ここは、薄い粘膜の直下に細い動脈が走っているので、少し刺激するだけで出血しやすいのです。そのため、吸引の際に、吸引管の先がこの場所にあたると出血することがあります。(図8)

とはいっても、実は、吸引管の先が、多少、鼻中隔側を向いた方が、よく吸えることが多いということもあります。鼻の構造のところで述べたように、鼻の中には外側から内側に向かって、下鼻甲介という出っ張りがあるため、空気の通路は、鼻中隔側にあります。そのため、吸引管の先は、多少、鼻中隔側に向けた方が吸いやすいのです。ただし、上述のように、この角度は出血をきたしやすいので、吸引管の先を深く入れすぎないように注意してください。(図9)

もし、出血したとしても、特に心配はいりません。ティッシュなどを、しっかり詰めて、しばらく安静にしていると、すぐに止まります。一旦、出血した後は、再出血しやすいので、その日は、それ以上吸わないようにして、翌日、また吸ってあげてください。吸引に限らず、子供さんは、何度も繰り返して鼻血が出ることがありますが、その場合も、さほど心配する必要はありません。あまり繰り返す場合は、耳鼻咽喉科で止血の処置を受けると繰り返しにくくなります。