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Q&Aコーナー

10.扁桃炎・扁桃肥大・扁桃周囲炎

10-1扁桃腺とはどこにあってどんなものなんですか?

一般に扁桃腺といわれているものは、正式な医学用語では「口蓋扁桃」といいます。扁桃は免疫に関係する臓器で、口蓋扁桃以外に、咽頭扁桃(別名 アデノイド)、舌扁桃、耳管扁桃などもあります。口蓋扁桃は、のどの奥の両側にあります。幼児期には比較的大きく、口をあけると、梅干のように見えます。一般には5〜6歳頃がピークで、その後には、徐々に小さくなっていきます。しかし、その経過には個人差が大きく、成人してからでも大きいままの場合もあります。

10-2【扁桃炎】の症状と治療法を教えてください。

細菌やウィルスの感染で扁桃に炎症をおこしたものを、扁桃炎といいます。扁桃が腫れて、表面に白い膿がついたようになります。主な症状は、のどの痛みと発熱です。細菌の感染では抗生剤が使われます。重症の場合、抗生剤の点滴が行われることもあります。ウィルスの感染では、抗生剤を使ってもよくならず、逆に副作用がおこることがあるので注意が必要です。扁桃炎をおこすウィルスの代表はEBウィルスで、これによる扁桃炎を伝染性単核球症といいます。伝染性単核球症は、英語圏では、Kissing diseaseともいわれます。思春期にはじめて異性とキスを交わした際に感染するケースが多いことからついた名称です。伝染性単核球症では、肝機能障害がおこり肝臓や脾臓が腫れますが、ほとんどの場合、特別な治療は不要です。細菌感染による扁桃炎を何度も繰り返す場合には、手術をした方がよい場合もあります。どのような場合に扁桃の手術をすべきかについては、10-5で述べます。

22才女性 急性扁桃炎

46才女性 急性扁桃炎

10-3【扁桃肥大】の症状と治療法を教えてください。

口蓋扁桃が大きく肥大したものを扁桃肥大といいます。扁桃は一般には炎症をおこすと大きくなります。しかし、小さい扁桃でも、扁桃炎を繰り返す場合があり、逆に、扁桃が大きく肥大していても、扁桃炎を全くおこさない場合もあります。大きいものでは、両方の扁桃が正中で接触するくらいになることもあります。扁桃が非常に肥大した場合、いびきや睡眠時の無呼吸をおこすことがあります。また、食事の際に肉の塊りなどを飲み込みにくくなったりすることがあります。

4才女児 右扁桃肥大

10-4【扁桃周囲炎】の症状と治療法を教えてください。

扁桃炎の炎症は、主に扁桃の中でおこります。これに対して、扁桃の周りの組織に菌が広がり、扁桃の中よりもむしろ扁桃の周りの組織に強い炎症をおこしたものを扁桃周囲炎といいます。扁桃炎は、通常、両側におこりますが、扁桃周囲炎は、左右どちらか片側におこるのがほとんどです。扁桃周囲炎がもう少し重症になると、炎症をおこしたところに膿がたまってきます。これを扁桃周囲膿瘍といいます。扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍は、一般に、飲み薬の抗生剤だけで治すことは難しく、点滴の抗生剤が必要となります。多くは嫌気性菌という特殊な菌の感染がおこっているので、嫌気性菌に対する抗生剤を使います。また、膿がたまっている場合は、口の奥の軟口蓋というところに穿刺や切開を行い、膿を出す処置が必要になります。

24才男性 左扁桃周囲炎

10-5扁桃腺は取ってしまっても大丈夫なんでしょうか?

扁桃は免疫に関係する臓器ですから、手術で摘出してしまうと、免疫の機能に影響がでるのではないかということが危惧されます。この点に関しては、扁桃摘出術やアデノイド摘出術を行った子供たちと手術を受けていない子供たちとでの比較を行った、いくつかの研究があります。これらの研究では、確かに、アデノイドや扁桃を摘出すると、検査上の免疫に関する数値が、わずかに低下するようです。しかし、これらの値は、時間の経過とともに元のレベルに回復することが確認されています。また、感染症などにかかる割合を比較すると、手術を行った子供たちと手術を受けていない子供たちとの間に、差は見られないということも報告されています。以上のことから、扁桃やアデノイドを摘出する手術を行っても、免疫が下がるといった心配は無用であると考えられます。

10-6扁桃腺の手術を受けた方がよいかどうかの基準を教えてください。

一般に、扁桃を摘出した方がよいのは、以下の三つの場合です。

(1)扁桃炎を繰り返す場合

年間4〜5回以上の扁桃炎を繰りかえす場合は、扁桃を摘出するのが望ましいといわれています。これは、身体の負担を軽減させるという観点からは勿論なのですが、これ以外に、扁桃炎を繰り返した場合の医療費と手術にかかる費用とを比較した、医療経済的な観点からも、手術が望ましいとされています。

(2)重度の扁桃肥大の場合

扁桃肥大があるために、重症の睡眠時の無呼吸がおこる場合や、肉の塊りが飲み込みにくいなどの食事の障害をきたしている場合は、扁桃炎がなくても、扁桃を摘出するのが望ましいといわれています。ただし、睡眠時無呼吸がおこっているかどうかは、見た目の扁桃肥大の程度では判断ができませんので、睡眠時無呼吸の有無を調べる検査が必要です。

(3)扁桃炎が原因で、他の臓器の障害をおこしている場合

慢性の扁桃炎が、皮膚や腎臓の病気の原因となっていることがあります。代表的なものとして、IgA腎症や掌蹠膿疱症などがあります。これらの病気が通常の薬などの治療で治りにくい場合、扁桃摘出術を行うことによって治る場合があります。