音は、外耳道(耳の穴)→鼓膜→中耳→内耳→聴神経と伝わり、最終的に、大脳の聴覚中枢で、音として感じ取られます。耳鳴は、この音が伝わる経路のどこに異常があっても起こりうると考えられます。つまり、一口に耳鳴といっても、その原因は様々です。
しかし、一般には内耳の障害を契機としておこるものが多いとされています。
そもそも、音は空気の振動ですが、その振動が内耳の蝸牛に伝わると、ここで、神経を伝わる電気信号に変換されます。一方、内耳の障害などで、本来の外部からの振動の刺激とは関係のない異常な信号が内耳で発生するのが、耳鳴の元と考えられています。(図1)
空気の振動である“音”は、内耳の蝸牛に到達すると、ここで、神経を伝わるための電気信号に変換されます。耳鳴は、内耳に障害がおこったため、外界からの刺激と無関係に、内耳で異常な電気信号が発生したものと考えられます。
耳鳴が聴こえるという場合、検査をすると、その多くに難聴が認められます。
前述のように、耳鳴は、音が伝わる経路のどこかに異常があっておこるものなので、耳鳴の多くは難聴を伴っています。しかし、自覚的にも検査上も、全く難聴が認められないのに、耳鳴だけが感じられるという場合も、稀にあります。このような耳鳴を、無難聴性耳鳴といいます。また、難聴があれば、必ず、耳鳴がおこるというわけではなく、高度の難聴があるのに耳鳴がないという場合も多くあります。
耳鳴を生じる割合を、年齢別にみていくと、60代くらいまでは年齢とともに増加するという報告があります。しかし、一方で、10代でも1割程度の人が耳鳴を感じており、また、逆に70代以降では、耳鳴を訴える人の割合が減少するともいわれています。すなわち、必ずしも老化現象ともいえない面があります。
「ザー、ザー」と水の流れるような拍動する音がする場合を、拍動性耳鳴といいます。耳鳴全体の1割程度に拍動性耳鳴があるという報告があります。拍動性耳鳴は血液の流れる音が原因になっていることが多く、このような血液の流れる音による耳鳴を血管性耳鳴といいます。血管性耳鳴にもいろいろなものがあるのですが、頭の中の血管の病気が原因でおこる場合や、心臓の病気でおこる場合もあるので、注意が必要です。ある時期から急に拍動性耳鳴を自覚するようになったという場合は、血管の病気がないか、早急に検査をする必要があります。
一口に耳鳴といっても、その原因は様々です。
耳鳴のなかには、原因がはっきりせず、特に治療も要しないようなものも多くあります。しかし、「ザー、ザー」というような拍動性の耳鳴は、前述のように、脳の血管の病気で起こっていることがあり、早急に検査を受ける必要があります。また、急性の内耳障害による耳鳴は、早期であれば治ることがありますが、時間がたつごとに治りにくくなるので、これも、早急に治療を開始する必要があります。この他、聴神経にできる聴神経腫瘍は、耳鳴で発症することが多く、徐々に進行する原因不明の難聴と耳鳴がある場合は、聴神経腫瘍についても検査を受けておく必要があります。
このように、耳鳴にも色々なものがありますので、一度は、耳鼻咽喉科で診察を受けられるとよいでしょう。